なんであんな映画を作ったろう。
哀しくて、さびしくて、心があたたまるのか、わからない。
泣いたり、嘆いたりはするけれど、心の声は口に出さない。
悪口は言わない。悪口は決して言わない。
生きていること、生かされたこと、産んだこと、育てたことに悔いはない。
でも本当にこんなで良かったのだろうか。
私達は生きていくことに必死だけれど、忘れたり、見逃したり、見ないようにしたり、
自分のことは見えたり、頑張っているけれど、優しさはどこへ行ってしまったのだろうか。
生きている時は気のつかないやつだったけんど、こんなんなるんなら、生きてるうちにもっと優しくしてやればー良かった。
と笠智衆が言う。
あのぼうっとした肉厚なお母さんは優しそうな目の中に
死や忘却や絶望や辛辣さを宿していた。
〇〇くんは将来何になるんや。おばあちゃんはその頃生きているやろか。
草むらで幼い孫にうわ言のように話しかけて、空を見つめる。
セリフがいちいち印象的で、今は言葉が実態を捉えていない、輪郭のはっきりしない、どうでも良い言葉が多すぎるけれど、あの映画の声や言葉は研ぎ澄まされて、重かった。